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 正札シール組合組合員・業界NEWS>どうなる2020年
 どうなる⁉
   2020年のシール業界と企業
 
  当組合の田中祐理事長は1月9日に開催された「2020 新年賀詞交歓会」における挨拶の中で、「どう考えてみても景気悪い。今年は、大サバイバルレースが始まるのではないか。我々、シール・ラベル業界にでも生き残りをかけた壮絶な争い、戦いが繰り広げられる」と大変厳しい見通しを示しました。そこで、当組合員企業及びタック紙メーカーの4氏は、どのような景況認識をもっているのか、昨年の回顧と本年の展望などを聞きました。
   (掲載、順不同)
 
 
  「環境調和型商品」拡販へ、プロジェクトチーム 
 株式会社タカラ 代表取締役社長 津田 邦夫

 当社は8月20日決算でありますが、前期については省力化・自動化に関する機械関連が好調だったこともあり、増収増益でした。ただし、上期(18年8月21日~19年2月20日)は好調でしたが、下期(19年2月21日~8月20日)になって動きが鈍くなりました。
 今期は9月以降、より厳しい状況が続いております。これは消費増税によるものだけではなく、米中貿易摩擦や日韓問題も影響しているように思われます。
 当社の場合、日用品で使われるラベルが多く、日用品はインバウンドにも人気の商品が多いので、そうした影響も少ないと思います。また、半導体関連も厳しい状況が続いており、当社もその周辺に関連する資材や包装材などの動きは鈍いですね。
 消費税はこれまで、3%、5%、8%と、増税前の駆け込み需要がありましたが、今回の10%増税ではその需要はほとんどありませんでした。
 昨年は元号が「平成から令和」へと変わり、新天皇即位の祝賀行事など、ラベル表示やパッケージ関連の資材が動くのではと予想していたのですが、期待通りにはいきませんでした。
 今期、ほぼ上期の終盤まできておりますが、今期は前期比で3%程度の売上増を目指しており、それを後押しするイベントとして東京オリンピック・パラリンピックがあります。訪日外国人の増加やキャンペーンも含め、モノが動けばシール・ラベル、パッケージが動きます。これが起爆剤となってくれればと期待しているところです。

 今期における設備投資としては、生産効率を上げ、より付加価値の高いラベルを製造するために既存のフレキソ印刷機を更新し、最新鋭機を導入します。
 さて、当社がこれまで積極的に推進してきたことですが、環境対策や環境配慮に関する製品の提案をより強化して参りたい。現在、東西の本社の営業部門、業務部門などから15人程度のスタッフで編成する環境調和型商品の販売に関するプロジェクトチーム『プロジェクトK』があります。彼らが環境配慮型の素材や機械に関する情報を収集し、時にはユーザーへも足を運んで勉強会を開催するといったと取り組みを、これまで以上に進め、拡販につなげていきたいと考えております。
  
 
  新市場開拓に向け積極提案 
 リンテック株式会社 執行役員 印刷・情報材事業部門長  吉武 正昭

 当社の中期経営計画「LIP-2019」の最終年度にあたる今期は苦戦を強いられています。7月の長雨・日照不足や9月・10月に上陸した大型台風などの影響により、食品関連のラベルや飲料用キャンペーンラベル、ウェットティッシュの蓋用ラベル、化粧品などのアイキャッチラベルの需要が低調でした。
 上期は、新天皇陛下のご即位やそれに伴う改元、ラクビーワールドカップの開催などによるキャンペーン需要の伸長を期待しておりましたが、大きな動きはありませんでした。
 下期についても、消費増税などの影響を受け、非常に厳しい状況が続いております。また、スーパーなどの小売店の正月休業の広がりや大手コンビニ各社の時短営業などの影響も少なからずありますので、今後の動向を注視していく必要があるでしょう。
 「LIP-2019」で掲げた数値目標の達成は困難な状況ですが、引き続き販促活動に取り組み、前期の水準はクリアしたいと考えております。
 今年の夏には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。昨年、当社ではオリンピック関連の動きはほとんどありませんでしたが、今年は様々なキャンペーンが増えると期待しており、その需要を取りこぼさない戦略的に動いていかなければなりません。
 オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、当社の産業工材事業部門が展開しているバスや電車などをラッピングする車両向けのマーキングフィルムなどのニーズが高まると考えております。全社一丸となって提案活動に一層注力していきます。
 近年、海洋プラスチック問題などをはじめとする環境問題への関心がこれまで以上に高まっています。当社は表面基材に再生PET樹脂を使用したラべル素材、FSC認証紙ラベル素材、植物由来の原料を利活用し、粘着剤層として「バイオマスマーク」の認定を取得したラベル素材などを製品化し、環境配慮製品のラインナップを拡充してきました。今後も市場のニーズを的確に捉え、新たな環境配慮製品の開発を進めてまいります。
 粘着ラベルの市場は、台所用洗剤などがシュリンクラベルやインモールドラベルへ移行するケースがある一方、粘着ラベルがまだ使われていない分野や用途も確実にあると考えております。
 新市場の開拓に向けて、付加価値の高い新製品の開発強化に加え、シール・ラベル印刷会社の方々との連携した製品提案に注力していきたいと思います。
  
 
  海外展開、順調に拡大
 大阪シーリング印刷株式会社 代表取締役社長 松口 正

 昨年を一言で表せば「躍進」の1年でした。
特に海外事業が順調に進み、昨年11月には、オーストラリアの包装商社と事業提携を締結することができました。目標だった環太平洋エリアの販路構築に一歩近づいたと感じており、今後はこのパートナーが持つ国際販路に乗せて、当社のラベリングマシンとクリアサーマルを広く世界へ販売する考えです。まずは、海外ビジネスの経験値を高めつつ、将来的にはアメリカ西海岸に営業所の開設を目指してまいります。
 海外に関しましては、中国ビジネスも順調です。現在、上海郊外の現地コンバーターから業務提携に近しい相談を受けており、前向きな検討に入ったところです。これも長年、中国に根差したビジネス展開の
成果だと感じております。
 今後も、一つひとつの案件を丁寧に進め、さらなるグローバル展開へ着実に進める決意であり、海外事業に関ついては、今年も一層力を注ぎ、グループ全体を牽引する事業へ育て上げる想いであります。
 国内については、海洋プラスチック問題の影響を受けてか、軟包材の動きが若干鈍く、今期決算(1月末)では、ほぼ横ばいの見通しとしています。
 ところで、環境配慮型包材への要望は、今後ますます加速するものと認識しており、現在、基材や粘着剤、それに適合する機械設計に至るまでトータル的な開発を進めております。紙化の動きも注視しながら、中身の商品に合った包材の提案に取り組む考えです。
 主力製品のラベルについては、売上高は前年比増の動きを見せています。なかでも伸長しているのが物流ラベルです。しかし、好調が長く続くとは限らないので、次なる一手を準備しなければなりません。
 そうした中、研究を進めているのが「印字方式」です。
 現在、主流の印字方式では、必然的に消耗品の交換が発生します。これをさらに簡易化できないか、あるいはラベルと同等レベルの機能を持たせながらも、別の基材で賄うことはできないかといった研究に取り組んでいます。あらゆる選択肢を用意し、お客様にとって最適な商材を提供できるように努力して参ります。
 当社にとって、最も関係性の強い分野が食品小売業ですが、恐らくこの数年で無人店舗への転換が一気に広がると予想しております。「コンビニ 電子タグ1000億宣言」から約3年、行政を中心とした情報整理が進み、実店舗と物流センター、それぞれの領域で使うデバイスの選定もある程度決まりつつあります。
 人手不足や食品ロスなど日本社会が抱える課題はまだまだありますが、当社としても、この新潮流に挑み、ラベルやパッケージを通じて社会的責任を果たす決意であります。
  
 
  東京五輪の特需に期待 
 王子タック株式会社 代表取締役社長 景山 高介

 昨年上期は、月によって好不調の振幅が大きかった、という印象です。
4月は史上初の10連休を控え、前倒し数量は大きく増えたのですが、その反動から5月と6月は伸び悩み、7月はお盆休み前とあって復調したのですが、盆明けは低調気味となりました。9月は消費増税前の駆け込み需要が多少ありました。
 このように、上期に関して言えば、浮き沈みが激しかったものの、売上も収益も「まずまず」といった評価をしているところです。
 しかし、下期は予想できない状況です。特に、下期に入って本来であれば最も忙しいはずの11月が厳しい。12月以降も急激に回復するといことは、現状においては考えられません。
 全体として昨年は、元号の改元、新天皇即位、ワールドカップラクビー、と大きなイベントが続き、当初は景況にも良い影響をもたらすのではと期待をしていたのですが、実際には期待通りにはなりませんでした。
 また、米中の貿易摩擦、日韓問題などネガティブな話題、さらには台風15号、19号による被害など自然災害によるマイナス要因が多かったように思います。
 2020年は、東京オリンピック・パラリンピックという大きなイベントがあり、これは必ずプラスに動くだろうと思っております。実際に特需がきているお客様もいらっしゃぃます。ただ、多くの方々の共通認識として、オリンピック後はどうなるのかということが心配ではあります。
 また、今年も自然災害が懸念要因としてあげられます。台風は地球温暖化の影響から大型化し、その被害もますます拡大化する傾向にあり、日本経済にもその影響は少なくないからです。
 環境問題も避けては通れない課題です。例えば、廃プラの動きがありますが、プラスチックには強度、耐水性などの品質面で優れている点があり、それはこれまで通り評価すべきであると思います。一方で、生分解プラスチックやバイオプラスチックといったものが注目されていますが、それらについても、生態系に影響も及ぼすか否かの検証は必要なことだと思います。
 いずれにしましても、当社は次世代のことを考えて、環境配慮型製品の商品化や提案を本年もさらに進めてまいります。
  
 
 トピックス
  花王が、「POPラベル」全廃へ
 2019年9月、洗剤・トイレタリーで国内最大手の花王が、「プラスチック製アイキャッチシール」(いわゆるPOPラベル)の全廃をめざすことを発表した。
 同社はニュースリリースで、「商品(パッケージ)にプラスして貼付するプラスチック製のアテンションツール『プラスチック製アイキャッチシール』の全廃をめざします。『プラスチック製アイキャッチシール』は、消費者の購入時に商品特徴や正しい使用方法などを的確に伝達できるメリットがある反面、その分のプラスチック使用量が増え、プラスチックごみや廃棄時のCO2、排出量の増大につながるという課題がありました。使用方法の伝達等がどうしても必要な場合は再生紙への変更を行いますが、それ以外は『プラスチック製アイキャッチシール』全廃を早急に進め、プラスチックごみとCO2排出量の削減を実現していきます」と表明した。
 これには、ラベルコンバーターはもちろんのこと、素材・原反メーカーや印刷機械メーカーも驚きを隠せなかった。
 POPラベルには、糊面に「糊殺し」という印刷技法が用いられる。そのための印刷ユニットが印刷機に搭載される。印刷機の色数も4色機から6色機、8色機、10色機へと色数を増やした印刷機をメーカーは製作してきた。
 また、ラベルコンバーターの多くが糊殺しのできる印刷機を導入し、ラベルの中でも付加価値の高いPOPラベル製作に注力してきたという経緯がある。
 POPラベルの全廃が、花王1社にとどまらず、日用雑貨、飲料などに広まれば、その影響はラベルコンバーターだけではなく、素材・原反メーカーにも及ぼすことは必須である。
 
※これは(トピックスも含め)、日報ビジネス㈱発行「包装タイムス」(2020年1月1日・6日付け)に掲載されたものを再編集したものです(文責・事務局)